【本の感想】上田早夕里 『妖怪探偵・百目 3 百鬼の楽師』

上田早夕里 『妖怪探偵・百目 3 百鬼の楽師』 光文社光文社文庫)、2015年発行を読みました。

書下ろし五編と「Web光文社文庫」掲載の三編の計八編の短編連作です。

妖怪探偵・百目 1 朱塗の街』、『妖怪探偵・百目 2 廃墟を満たす禍』に続く、妖怪探偵・百目シリーズの三作目にして最終巻です。

☆☆☆☆

妖怪探偵・百目シリーズ最終巻です。強大な敵に対する闘いの駆け引きと、敵の敵は味方論であっても思惑交じりの駆け引きが楽しめます。

雰囲気は妖怪大戦争です。巨大な敵に対する拝み屋+応援妖怪たちの闘いと駆け引きが面白いです。

ほとんどが最終戦に向けた内容で、一見SF成分は少ないようで、最後にとんでもないものを用意してきます。

強大な敵<濁>との闘い

強大な敵<濁>に立ち向かう拝み屋が完全に主人公です。<濁>と拝み屋の因縁が生み出した大きな闘いなので当然です。妖怪たちもこの闘いのサポートをすることもあり、前巻に続いて妖怪側のガジェットや術(呪)が飛び交います。闘いは一進一退なこともり、読んでいてはらはらさせられます。

それぞれがそれぞれの立場を表明して協力していく様は、妖怪側の理屈もつけられていることもあって面白いです。とはいえ、一番面白いのは百目と綾藻のガールズトーク?です。それはそれ、これはこれという妖怪らしいユーモアあるやりとりに笑いを誘われます。

人間と妖怪

終盤に人間と妖怪の違いがはっきりと描かれます。以下、拝み屋の台詞を引用します。

「人間という存在は……唯一、自分で自分の在り方を否定できる生き物なんだよ。妖怪には想像もつかないだろう。」p280

「なぜなら人間は憎悪に狂うが、それと同時に、憎悪を退ける心も持っているからだ。まったくもって、人間というのは、妖怪より食えない連中だと思わないか。人間の複雑さの前では、妖怪のまっすぐな心などただの純情だ」p285

他にも彼女の愛情や、話が進むごとに影が薄くなる探偵助手の言動など、「まったくもって、人間というやつは」と、温かい気持ちで人間のことを思うようになります。

大どんでん返し

SF要素薄めの本巻ですが、最後の最後で強烈なSF要素があります。たしかにそういう伏線はありました。本編にはそれほど大きく関わるものではありません。それをこういう形で持ってくることに驚かされました。

そういえばこのシリーズの発端は『魚舟・獣舟』の「真朱の街」です。妖怪とSFの融合、未来妖怪だったと思い出させてくれます。

さいごに

眩暈とともに幻視をするような後味の悪いこともあれば、終わった後の妖怪との心温まるやりとりやオチ、苦しい辛い過去に苦悩しながらも人間は前に進んでいくだという人間賛歌も含めいい読後感です。

シリーズ最終巻の本巻は、前作、前々作に比べて面白さがぎゅっと凝縮されています。最初に興味を惹かれた妖怪と近未来SFという変わった組み合わせを思うに、「凄い」の一言です。

読むならばシリーズまとめて一気に読みましょう。読めば「凄さ」がよりいっそう感じられるでしょう。

以下は337ページからの引用です。

「妖怪探偵は、これからもずっと真朱の街にいる。呼びたいときはいつでも呼んで。来たければ、いつでもここを訪れて。興味があれば私は仕事を引き受ける。ただし、報酬は依頼人の寿命。それを他の人たちにも教えてあげてね」

最後のこの言葉にジーンときました。ああ、シリーズが終わるんだなと。そして、ジーンとさせられるほどに、この妖怪探偵・百目シリーズは良かったのだとあらためて感じました。

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