【本の感想】上田早夕里 『妖怪探偵・百目 2 廃墟を満たす禍』

上田早夕里 『妖怪探偵・百目 2 廃墟を満たす禍』 光文社光文社文庫)、2015年発行を読みました。

書下ろし五編と「Web光文社文庫」掲載の二編の計七編の短編連作です。

妖怪探偵・百目 1 朱塗の街』に続く、全三作の二作目です。

☆☆☆

SFと妖怪を融合した不思議な小説です。近未来SF度合いも妖怪度合いも深度が増しています。その面白さは前巻以上です。

一方で前巻の最後に出てきた敵役の来歴をさかのぼるとともに、敵役目線で語られる内容はスケールが大きく、本巻が大きな起点となっています。

近未来SFと妖怪の融合

人間とSF、妖怪とSF、科学的に妖怪とは何かを語るところは上田節といえばいいのでしょうか。不思議と融合しています。その描写に違和感はなく、自然にそれぞれがそれぞれに絡み合っています。そこにはユーモアもあればシリアスがあります。

例えば、一度死んだ警察官である忌島は科学技術により強制的に生き返ります。使うたびに過度に心臓に負担をかける拳銃を扱わざるを得ない状況下です。その拳銃を作った拝み屋から、「あなたは科学技術で生かされている人間だから負の影響で倒れることは滅多にない」と言われる始末です。

他にも人工皮膚で覆われた妖怪がタブレットを操作しようとしても反応しない、火を盗る妖怪が「最近はオール電化が進み、提灯や行灯はLED、煙草を吸う人も減り、誕生日やクリスマスケーキぐらいしか火を盗る先がない」とぼやくなど、融合した世界ならではのユーモアもあります。

敵対と友好

前巻はユーモア多めでしたが、本巻は人間と妖怪の敵対関係とそれを利用とする主に人間側のいやらしさが物語をシリアスにしています。自身に忠実で、気ままで、積極的に戦う理由のない妖怪と、特殊な事情で妖怪を滅しようとする人間と、その背後にある別の人間の身勝手さなど、物語は深刻さを増しています。

「妖怪楼閣」で描かれる、つかみどころのない妖怪と人間を比較すると、妖怪側の自由度がうらやましく、ためいきがもれそうになります。前巻の「炎風」でもそうでしたが、人間というのはほんとうにいやらしいです。

物語では敵対ではない中間の着地を模索していくのですが、利害が異なる中、中道を進むというのは本当に大変です。良い人間というのはいつも苦労しています。それゆえ、妖怪の竹を割ったような言動が羨ましく感じます。

さいごに

本巻は全三作の二作目です。大きな伏線を貼って次巻へつながる内容になっています。物語のスケールも事情も大きく深くなっています。

その膨らんでいく様が面白いです。妖怪と人間のスタンスの違いも改めて強調される中、強敵に挑む準備をそれぞれしています。

本巻は前巻に比べあらゆるものが増しています。そのため、前巻から間を空けずに読むと、この魅力的な世界にぐっと引き込まれるのではないでしょうか。『魚舟・獣舟』収録の「真朱の街」から一気に本巻のレベルまで密度を上げてほしかったです。

そんな妖怪探偵百目シリーズも次巻の『妖怪探偵・百目 3 百鬼の楽師』で完結します。

コメント