【本の感想】殊能将之 『キマイラの新しい城』

殊能将之『キマイラの新しい城』 講談社講談社文庫電子版)、2013年発行を読みました。

『キマイラの新しい城』は『美濃牛』、『黒い仏』、『鏡の中は日曜日』に続く探偵石動シリーズの第四作目です。

☆☆

750年前の騎士が現代の東京、六本木で暴れるところは面白いです。

750年前の死の真相を我らが名探偵石動儀作が解決……はできず、今まで以上に情けない道化ぶりを発揮します。その情けなさと間抜けぶりが面白くはあります。

骨格はミステリーで中身はファンタジーです。参考文献とのつながりが分かれば楽しめます。

750年前の騎士が現代に

見えるもの食べるものも過去の常識で判断します。現代に戸惑い、突っ込みをいれる描写も面白いですが、なによりもトキオーンのロボンギルスでヤクザ相手に大暴れするところが一番の見どころです。

騎士様はやはり騎士様です。ヤクザ相手にも槍をもってバイクにまたがりベンツに突っ込んでいくからです。その前段ではそういう活躍ができなかった十字軍遠征のことが語られているだけに、大いに話が盛り上がるところです。

中年ハリーポッター石動儀作

もはや名探偵ではなく、道化っぷりがさらに激しくなるばかりです。過去の事件を解決するために、見た目は中年ハリーポッターにしか見えないコスプレをし、語る推理は的を外れ、挙句の果てには前作で既知を得た水の城の優しき姫に助けを求める始末です。

もちろん、探偵らしく一同を集めて語るシーンもあるのですが、その見た目、借り物の推理など、どこまでも頼りない探偵になっています。その情けなさは登場人物からも突っ込みを入れられているのですが、それでも活躍するシーンとなると嬉々として語る姿は推理が趣味で、探偵を名乗るおっさんでしかありません。

本格ミステリとハイファンタジーの組み合わせ

気づけば分かるちょっとした楽しみもあるにはあります。最後の武器とか派遣会社とか人物名とか地名とかですが、そういうことを楽しめないと楽しくないでしょう。

気づけば面白いですし、そのつながりに感心します。とはいえ、マイケル・ムアコックを読んだのはかなり前なので、参考文献を見てもなかなか思い出せませんでした。

思い出してしまえばクスクス笑えます。本格ミステリとハイファンタジーを組み合わせた面白い試みの本です。

さいごに

真面目にふざけている本です。事件の真相であるネタは身も蓋もない内容です。

密室とミステリーのことを語るシーンと最後の真相が物語のキモとなる拗らせた笑いを誘うところなのでしょう。実に楽しそうに探偵は語っているのですが、その土台にそれほど気を使わない身からすると、なんの感慨もありません。むしろ、印象に残るのはアクションシーンばかりです。

「分かる人にだけ分かって楽しんでくれたらそれでいい」という著者の声が聞こえてくるようです。

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