【本の感想】桜坂洋 『All You Need Is Kill』

桜坂洋『All You Need Is Kill』 集英社集英社スーパーダッシュ文庫)、2004年発行を読みました。

☆☆☆☆

死に覚えゲーを小説にしたような話です。

ひたすら試行回数を増やしゲームをクリアする様を楽しむことができます。

文体は硬く、展開はスピーディーでハードボイルドを読んでいるような感じです。

死に覚えゲーを小説にしたような

序盤は現実にあったら「クソゲー」と評価されてしまいそうな展開です。しかし、十回繰り返すまでもなく、ルールを理解して繰り返し、前進していく様は非常に面白いです。

選択の非常に広いゲームの世界でレンガを積み上げるように一つ一つ磨いていくことが好きな人にはたまらないと思います。明確な数値もスキルツリーもありません。しかし、アクションゲームなら常に初期値でキャラクターは動いても、コントロールする側の指裁きでどうにかなります。敵や見方の配置や行動を覚え、シビアなタイミングでコントールしてステージクリアを目指すアクション、もしくはシューティングゲームだと思えば、これほど面白いものはないと思います。

そういうゲームを小説で体験できるという一風変わった話です。これが面白い。

絶望的な展開だか絶望的にならない内面

ゲームなら気軽に何度もコンティニューすればいいだけです。しかし、では動くことになる主人公の内面はどうかということです。普通なら絶望して病むところですが、そうならず前向きに解決しようとします。

寂寥感と達観が入り交じったように少しずつ前進していきます。うじうじとしないこの前向きな姿勢と、物語の展開の早さが組み合わせが面白く、不快感なく楽しめます。

さいごに

設定の妙と息つく暇もないスピーディな展開、ハードボイルドを感じさせる乾いた文体、前に進む姿勢、そこはかとなく感じる寂寥感と達観が混じり合って大変面白いです。

特に繰り返すことを前提としたアクションゲームやシューティングゲームが好きならばきっと楽しめます。

補足

映画版は「ザ・ハリウッド」という感じです。視覚的にアクションを楽しめます。漫画版は小説では分かりにくい暗さや厳しさが伝わってきます。そして小説はその中間です。小説版は兎にも角にも展開優先で無駄を徹底的にそぎ落として簡潔にスピーディに走り抜ける爽快感と、戦いの寂寥感や無常観を感じられます。

それぞれちがった面白さがあります。最初に小説版を読み、続いて漫画版を読みます。そうしていったん物語を終わらせた後に、映像を楽しむために映画版を見るとよいと思います。私はそういう順番でした。

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