【本の感想】ゲイル・キャリガー 『ソフロニア嬢、仮面舞踏会を密偵する』 川野靖子訳

ゲイル・キャリガー 『ソフロニア嬢、仮面舞踏会を密偵する』 川野靖子訳、早川書房ハヤカワ文庫FT)、2015年発行を読みました。

原題は『WAISTCOATS AND WEAPONRY FINISHING SCHOOL BOOK THE THIRD』です。全四部作の英国空中学園譚の三作目です。

☆☆☆

一作目『ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る』、二作目『ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ』の続編です。

仮面舞踏会に列車強盗、三角関係の結末に友人の悩みと旅立ち、姿を現す政治的陰謀がつまっており、物語は大きく前進します。

三角関係の結末

自覚のないイチャコラを続け、男性二人を困惑させ、ついでにその反応に本人も困惑をしています。そんな困惑にも決着がつきます。男性二人にはそれぞれに独特の魅力があり、身分に大きな差があります。その間で揺れ動き、将来にも干渉するような発言をとろうとする様は微笑ましいとも言えますし、悪女的ともいえます。

なぜ悪女的かというと、ソフロニア嬢の天然さと学園で学んだ術が組み合わさっているからです。そのため、悪女的であり悪魔的ではないでしょうか。

男性からすれば楽しむどころか、おあずけを喰らった犬のようなものですので同情を禁じえません。結末は男性が報われたとはまだ言い難いのでまだ苦労しそうです。しかし、この性格、考え方、行動力に惚れてもしかたないのかなとも思います。

友人の変化

ある意味で真のヒロインはシドヒーグです。英国パラソル奇譚では『アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う』に登場し、『アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う』では荒れ狂っていた彼女も本巻ではまだ子供です。しかし、家の危機に対して大きな決断をします。

英国パラソル奇譚を知っていればそうなるんだろうなぁという結末になるわけですが、そこに至る道は語られていなかったわけです。それが本巻でようやく補完されます。ここだけで読む価値があると思います。

彼女はこの歳で決断をしたんだと思うと胸が熱くなります。

さいごに

シリーズの終わりにむけて大きく前進をする巻です。子供らしい無茶と無邪気さにアクションが加わり、物語もスピーディとなると次が気になって仕方がありません。そういう面白さはあります。まさにヤングアダルト向けのエンタメ小説です。

四巻目は『ソフロニア嬢、倫敦で恋に陥落する』です。英国空中学園譚は次巻で完結します。それぞれはどのように、英国パラソル奇譚との整合性を含めてどうフィニッシュするのかが楽しめます。

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