【本の感想】ゲイル・キャリガー 『アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る』 川野靖子訳

ゲイル・キャリガー  『アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る』 川野靖子訳、
早川書房ハヤカワ文庫FT) 、2012年発行を読みました。

原題は『TIMELESS』です。全五部の英国パラソル奇譚の五作目にして完結作です。

☆☆☆☆

アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』、『アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う』 、『アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う』 、『アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う』と続いた英国パラソル奇譚の五作目にして完結作です。

二歳の娘の可愛さと活躍が大きく目立ちます。また、ロンドンでは残った人狼たちの悲しいBLが目につきます。

子どもは可愛い

子どもは可愛いです。それが二歳の娘ならなおさらといったところでしょうか。冒頭のお風呂を入れる話だけであのアケルダマ卿とその取り巻きが振り回されています。

人狼にもなり吸血鬼にもなる子どもです。力の加減が分からず、子どもらしいやんちゃぷりは見てて面白いです。やんちゃぶりに周りは振り回されるのですが、それがコメディになっています。

それにしても母親は強く、父親はだらしないです。

母親は強い

アレクシア女史の強さはいつものことですが、親友のアイヴィの強さも印象的です。独特なセンスをもつ帽子マニアの彼女は、乙女らしさを残しつつも一座を仕切る強さがあります。自分の子どもの危機には帽子以上に力を発揮します。

このエジプト旅行の結末も含めて大活躍です。

何もできないと思われそうな彼女は、意外なところを持っていることが他の巻でも分かるのですが、本巻ではそれがまた印象付けられます。一巻では独特なセンスをもつ変わり者であったことを思うとなんとも感慨深いです。

もっとも、独特なセンスをもつ変わり者であったことは最後まで変わらないわけですが。

ボーイズラブ

一方のロンドンでは吸血鬼ではなく、人狼たちのボーイズラブがあります。さりげなく相手を気遣ったり、見る描写や行動、台詞はおしゃれな感じです。

その場面での描写はないため分かりませんが、ベッドでは何を確認するんでしょうかね。まったくもう。

さいごに

今作の面白さは一巻に近いですが、中身は随分と違います。今回は女性では娘のプルーデンスと親友のアイヴィに、男性では人狼たちが大きくフィーチャーされたように思います。どちらも今までにない面白さがありました。

アレクシア女史の強さは相変わらずですが、周りも変化して強くなっているところが感じられます。シリーズものらしい面白さです。

英国パラソル奇譚はシリーズはこれで終わりです。自分を卑下する25歳のオールドミスが自分を曲げず、時に夫に疑われ、夫に隠しがばれたりと苦労もありますが、なんやかんやでシリアスとコメディを行ったり来たりしながらも、知能と行動で活躍していく様はもう楽しむことはできません。

なんとも残念ではありますが、同じ世界観や娘のプルーデンスを主人公にした話はあるとのことです。人狼も吸血鬼も新しい問題にどう対応するか気になるところです。

とはいえ、先を引っ張る終わり方ではありません。番外編を読みたくなる面白さのある終わり方です。

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