【本の感想】ゲイル・キャリガー 『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』 川野靖子訳

ゲイル・キャリガー 『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』 川野靖子訳、早川書房ハヤカワ文庫FT)、2011年発行を読みました。

原題は『SOULLESS』です。全五作の英国パラソル奇譚の一作目です。2010年にアレックス賞を受賞しています。

☆☆☆☆

著者の好きなものを全部入れたような恋愛小説です。19世紀イギリス、ビクトリア朝、吸血鬼と人狼、ゴーストと共存するロンドンで勝気な25歳のオールドミス、アレクシア女史が自由奔放に活動する様が楽しめます。

恋愛がベースになっていますが、この世界観は魅力的です。そして個性的な人物たちがその魅力をさらに大きく、面白くしています。

魅力的なキャラクター

主人公のアレクシア女史、恋愛関係になる人狼のマコン卿、独特な言葉使いとファッションの吸血鬼アケルダマ卿と、主要を固める人物は分かりやすい個性と面白さがあります。

さらに三人の脇を固める脇役も読めば忘れないような個性があり、物語を大いに盛り上げています。

アレクシア女史

主人公にしてヒロイン。19世紀イギリスではオールドミスですが25歳です。勝気な女性が恋愛に、事件に怯えることなく、自由に前向きに楽しんでいる様がこの小説の大きな魅力です。

マコン卿

ヒーローにしてヒロイン。力強いはずがアレクシア女史のことになると我を忘れて行動したり、戸惑ったり、大胆になったりと様々です。恋に落ちていることに気づかず副官に語ったり、恋の駆け引きに毎回悩まされるなど不器用なところが魅力的です。

アケルダマ卿

吸血鬼にして良きアドバイザー。くねくねしながら独特の表現を駆使して語る姿はなんともおかしいです。核心を突くような言葉やヒントも、その言い回しのためなかなか気づかれません。それを含めて謎めいたところがあり、そのこと自体を楽しんでいることが魅力です。アレクシア女史の保護者のようなところあります。

ベースは恋愛

もどかしさと艶のあるラブロマンスがこの小説の軸となっています。アレクシア女史にしてもマコン卿にしても分かりやすい性格なのですが、恋愛となるとそうではありません。読んでいてもどかしいやりとりが繰り返されます。

本人の戸惑いや周りからの助言など、恋に戸惑い周りが見えない様そのものがユーモアになっています。それでいて艶のある話にも大きく踏み込んでおり、R-15かな?と思うような描写もあります。

その最中でも、冷静に楽しんでいるアレクシア女史の考えと行動にユーモアがあるように思います。やることやりますがいやらしくなく艶がある感じです。

好きなことを詰め込んだ物語

服装や料理のことにページを費やすあたり、著者はこの時代のことが好きなんだろうなということがひしひしと伝わってきます。筆が走っている感があります。

この時代のロンドンというのは実に魅力的です。でも服装や料理に興味がないと、その部分は苦痛でしかありませんが。

さいごに

ヴィクトリア朝時代のなんやかんやにラブロマンスを入れて鍋でかき回したような作品です。大人のラブロマンスを土台に、サスペンスとコメディとSFで味付けしている料理ともいえます。

読んでいて楽しい一冊です。最後に登場する人物は実に英国的ではないでしょうか。

そして物語は『アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う』に続きます。

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