【本の感想】ゲイル・キャリガー 『ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る』 川野靖子訳

ゲイル・キャリガー  『ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る』 川野靖子訳、早川書房ハヤカワ文庫FT) 、2013年発行を読みました。

原題は『ETIQUETTE AND ESPIONAGE FINISHING SCHOOL BOOK THE FIRST』です。全四部作の英国空中学園譚の一作目です。

☆☆☆☆

世界観は英国パラソル奇譚と同じですが、舞台は『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』の二十五年前です。おてんば少女が大活躍します。

英国パラソル奇譚を感じる人物や地名、学園譚らしいけれどもかなり変わった授業の数々、そしておてんば少女である主人公の活躍が面白いです。

英国パラソル奇譚とのつながり

アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う』で出てきたあの人やこの人、『アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う』で出てきた人狼の弱点、『アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う』で中心となったあの地名と、覚えていればクスッとできますし、分かっていればいるほど、「なるほど」と一人うなづけます。

全て未来の話なので作中では特に解説はありません。さっと流されているため、知らなければ分からないだけです。しかし、知っていれば楽しめること間違いなしです。

変わった授業の数々

作者の悪ふざけ感はありますが、前シリーズのひらひらパラソルを彷彿させるネーミングセンスと授業は独特の空気感を作り出しています。

例えば失神する授業だと「場面と下着の種類に応じた正しい失神法」や「込み合う舞踏室で特定の男性の注意を惹く失神のしかた」という具合です。上流階級の子女が集まる花嫁学校とはいえ、なんとも珍妙な授業です。

おてんば少女の活躍

元気のありあまるおてんば少女の我らが主人公は、その行動力と頭の回転の早さをつうじてこの変わった世界観の上にある舞台を物語を大いに楽しませてくれます。

その活躍をたった一人で独占しているわけではありません。もちろん一人の時もありますが、学園譚らしく友人たちも巻き込みながらも学園の謎に迫りながら、友人たちと楽しい冒険をしてくれます。

大人も煙に巻くような行動は実におてんば少女らしく、スパイ養成所の生徒っぽいです。そしてそれらが面白いです。

さいごに

英国パラソル奇譚の二十五年前が舞台ですが、各所でロボットが動いており、オーバーテクノロジー感はあります。その分SF色は強くなっています。好奇心旺盛な主人公はそういうところも掘り下げてくれますから、その面でも楽しめます。

ビクトリア朝とスチームパンクの組み合わせ、そして子供たちの機転を利かせた冒険と友情が好きならきっと楽しい物語になるはずです。

二巻目は『ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ』です。友情、恋愛、陰謀を含んだ、おてんば少女、ソフロニア嬢の冒険活劇はまだ続きます。

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