【本の感想】ゲイル・キャリガー 『アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う』 川野靖子訳

ゲイル・キャリガー 『アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う』 川野靖子訳、早川書房ハヤカワ文庫FT)、2011年発行を読みました。

原題は『CHANGELESS』です。全五作の英国パラソル奇譚の二作目です。

☆☆☆☆

前作の『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』の続編です。ファンタジー、ミステリ、SF、冒険と著者の好きなものを全部入れたようなスタイルに変わりありません。前作以上に奔放になったアレクシア女史が大変魅力的な恋愛小説です。

恋愛がベースになっていますが、この世界観は魅力的です。そして個性的な人物たちがその魅力をさらに大きくしています。

恋愛はより濃密に

主人公のアレクシア女史の自分にまっすぐな奔放さは夫婦になっても変わりません。むしろ、より積極的に愉しんでいます。夫となったマコン卿も同様で、こと夫婦間に関しては親密すぎる愛の表現が随所にあります。

前作にあった遠慮と恥じらいがなくなったとも言えます。

新婚夫婦

そんな熱々の新婚夫婦のやりとりの楽しい面とそうでない面があります。今回はそうでない面であるコナル卿の過去に関する話です。今の嫁には昔の話はしたくないよなぁと同情します。しかし、我らがアクレシア女史は容赦がありません。

惚れた弱みとはいえ、コナル卿は大変です。時折ぼやくところもありますが、同時に惚気てもいます。ほんとお似合いの二人です。バカップルです。

魅力的な世界を彩るガジェット

ようやく活躍するパラソル、タイトルにもなっている飛行船、電信が失敗した代わりに出てきたエーテルグラフ通信など、前作に比べてSF要素が多めです。それぞれに見せ場があります。

見せ場はありますが、ガジェットはガジェットです。舞台のSF要素が少し豪華になった感じですが、直接的な面白さがあるわけではありません。

恋愛は広がる

身分を超えた恋愛、男装麗人と同性愛の話があります。実にコメディちっくなところもあれば、妖しく感じさせる描写もあります。夫婦間の直接的なやりとりと比べて艶めかしいところもあります。

いやらしさはありませんが、わざとらしさとさりげなさが使い分けられており、ちょっと赤面するような感じです。

さいごに

前作同様、今回もヴィクトリア朝時代のなんやかんやにラブロマンスを入れて鍋でかき回した料理のような作品です。ガジェットの多さにより味付けは若干濃くなったように思います。

それにつけてもアレクシア女史です。嫁となった苦労もなんのその、新しい事実に驚きながらも動揺せず、自分を貫いて行動してます。アルファ雌として堂々としている様は実に痛快です。女性は強いです。そしてアレクシア女史は女性です。しかもアルファ雌です。

結末はずるいです。このシリーズに包まれたすべてをぶち壊す展開で本作は終わります。この作品が好きならすぐに次巻『アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う』を読みたくなるはずです。

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