【本の感想】デーヴァ・ソベル 『経度への挑戦』 藤井留美訳

デーヴァ・ソベル 『経度への挑戦』 藤井留美訳、角川書店角川文庫)、2010年発行を読みました。

原題は『Longitude―The True Story og a Lone Genius Who Solved the Greatest Scientifac Problem of His Time』です。長い副題は翻訳すると「当時の科学界最大の問題を解決した孤独な天才の話」です。

フランスではLe Prix Faubert de Coton(綿の綱帚賞)を、イタリアではPremio del mare Circeo(キルケの海賞)を受賞しています。

☆☆☆

長い副題のとおり、当時の科学界最大の問題を解決した孤独な天才の話です。当時の科学界最大の問題とは「正確な経度を測ること」です。その問題を解決したジョン・ハリソンという時計職人を描いた科学読み物です。

国王の身代金相当を賞金として、天文学者対時計職人、もしくは天の時計(月距法)対機械の時計の闘いを描いています。

そんな先駆者たちの闘いは、面白いかというよりも退屈な話です。これは科学技術の素晴らしさではなく、人の醜さの方が強く出ているからではないかと思います。

クロノメーターとグリニッジ標準

今では当たり前となっていることを掘り起こして科学技術の素晴らしさを伝えています。今はデジタル時計とGPSで不要になっているとはいえ、その前の科学的な積み上げがあってこそです。

そんな先駆者たちのドラマというだけで読む価値はあると思います。

二つの闘い

目的は同じはずですが、賞金の大きさからか、随分と泥臭い人間ドラマになっています。天の時計にも機械の時計にも良し悪しはあれど、多額の賞金が絡むとどうも人は良い方向にならないようです。

どちらかを贔屓にするような書き方はしていません。それでも天文学者側のやりすぎは目に余ります。それでもそのとんでもない要求を18世紀の時計職人が叶えてしまいます。

天文学者にしても時計職人にしても、物事を突き詰めて先駆者になるという事は、ひらめきとひらめきを支える不断の努力が必要なことを教えてくれます。天文学者は月の周期を記録するために十何年も記録を取り続け、時計職人は振動や寒暖差に負けないために何十年もかけて時計を作ります。

小説ではないため淡白な描写ですし、もっと掘り下げた方が読み物としては面白いと思いますが、先駆者たちのとてつもない苦労は伝わってきます。

さいごに

先駆者は凄い。これにつきます。

しかし、読み物として面白いかというとそうではありません。どちらかというと退屈でした。これは先の『リリエンタールの末裔』を読んだこともありますし、小説と科学読み物では視点も魅力の見せ方も違うということもあるでしょう。

ちなみに本書とほとんと同じ描写が『リリエンタールの末裔』にもあります。このような発見はちょっと面白いです。

コメント