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【本の感想】アーサー・C・クラーク 『都市と星 [新訳版]』 酒井昭伸訳

アーサー・C・クラーク 『都市と星 [新訳版]』 酒井昭伸訳、早川書房ハヤカワ文庫SF電子書籍版)2012年発行を読みました。

☆☆☆

始めに描かれる都市に古くささが無いことに驚きました。

都市を出る頃には驚きは減り、話は尻すぼみしていきます。

古くささの無い驚き

MORPGとVRを組み合わせたゲーム(作中では「サーガ」とよんでいます。)をプレイしているところから物語は始まります。こう書けば今風ですが、本書のオリジナルは1956年発行です。それなのに古さを感じさせません。

その後、主人公の住む都市がどのようなところかが明らかになります。そこで分かるのは、誕生から死までを完璧にコンピュータに管理させている都市の姿です。そのとてつもない科学力で支えられている揺りかごのような都市と、そこから抜け出そうとする主人公の冒険が描かれます。

よく言えば安定、悪く言えば停滞している都市で、ある種の歪みのような主人公が次にたどり着くのが精神的に進化した都市です。自然が多く、極力機械に頼らず、テレパシが使える都市です。

どちらが優れているかというわけではありません。しかし、都市から出てきた主人公の目線のためか、自分が住んでいた都市は、進化に行き詰まっているのではないかと強烈に意識させられます。

蛇足感が強い旅路

旅ではさらに大きな存在を知り、元いた都市の停滞を変えようとするのですが、どこか蛇足感が強いです。

都市から外へ。星から宇宙へと探究心のまま旅を続けて新しい発見をしていくところに前向きな感じはありますが、そのこと以外に主人公に何かが無いためか、これといって面白いところがありません。

新しく変化にチャレンジする人の姿もありますが、その人物に視点が変わらず物語は終わります。変化を受け入れるハッピーエンドとも言えるのですが、特段感動もなく、淡々としている感じがしました。

さいごに

物語最初の密度の濃さと、その後の差が激しいように思います。前半の都市の姿が面白かっただけに残念な読後感です。

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