「 2017年02月 」一覧

[読書雑文]『富士学校まめたん研究分室』芝村裕吏

『富士学校まめたん研究分室』芝村裕吏を読みました。工学系のめんどくさいアラサー女子は同僚の力を借りながらロボット戦車を開発する物語です。

残念なリケジョ

自分でめんどくさいと言っているだけあってめんどくさい女性ですが内面は純です。内面ではひたすら自虐と反省を繰り返しており、たまにそれが行動にもでます。その赤裸々な内面と普段のツンツンした行動のギャップを可愛いと思うかどうかだと思います。

一人やっちゃったことをもだえています。それが可愛く面白いです。

ロボット戦車ことまめたん

表紙に描かれているとおり多脚戦車です。似たような物ですと攻殻機動隊のタチコマ・フチコマです。さすがにタチコマ・フチコマほどアグレッシブでもなければ会話をするようなAIは持ち合わせていません。

それでも終盤の描写は新しい時代を感じさせるものだと思います。既存のシステムとリンクして思わぬ行動に出たり自動判断で敵を追い込んでいく姿は興奮させられました。

ロボット戦車導入の過程

技術的な障害や自衛隊内での現場感のあるやりとりは読んでいてワクワクしました。

兵器として現状と関連してどのポジションの兵器にするかであるとか、災害のことも視野に入れて設計するなど、自衛隊らしい考え方やエピソードを盛り込んで描かれています。その現場感ある論理的な会話や思考でゼロから作り上げていく過程は物作りの過程そのもので、臨場感があり引き込まれます。

面白さは三つ

もだえる姿は恋愛物であり、兵器を作り込むところは開発物であり、活躍する姿はSFです。この三つが本書の面白さです。


[読書雑文]『この空のまもり』芝村裕吏

『この空のまもり』芝村裕吏を読みました。電子タグで汚染された日本に対し、ニートの架空防衛大臣が戦いを仕掛ける物語です。

ネットスラングと様式美

主人公はニートだが凄腕、ニートだが幼なじみに好かれている、ニートだが信頼されている、ニートだが仲間がいる。その状況におごることなく冷静に、でも不器用に対処している。そういう話です。

主人公の周辺もまとめサイトで見かけるような様式美のようです。それが面白く、苦笑いさせられます。

電子タグに汚染された日本

電脳コイル』や『イングレス』のように、メガネやスマホを通じて見ると現実に仮想現実が重なって見える世界です。その仮想現実は近隣諸国による政治的落書きで日本の空は埋め尽くされており、日本政府は対処していません。

愛国心

右も左も子どもも大人もそれぞれの立場で愛国心を語り、行動するシーンがあります。それらが収束していく中で、主人公もまた特有の考え方で行動をします。様々な愛国心や個人が出来ることについて決して熱くならず、一見投げやりのような主人公のシンプルなまとめが印象的です。

愛国心となるとなぜか極論や罵倒や暴力がクローズアップされがちです。本書で愛国心とは何かをちょっと考えてみるのも面白いでしょう。


[読書雑文]『小説あります』門井慶喜

『小説あります』門井慶喜を読みました。失踪した小説家の謎解きの過程で「人はなぜ小説を読むのか」を兄弟で議論する物語です。

姉妹作品

物語の舞台は『おさがしの本は』と同じです。『おさがしの本は』後の話です。前作の主人公も登場してきます。とはいえ前作を知る必要は無い程度の関わりです。

人はなぜ小説を読むのか

兄弟で「人はなぜ小説を読むのか」について議論をし、一つの結論にたどり着きます。その結論にたどり着くまでに色々な話は出るのですが、どれも説得力に欠けています。「人はなぜ小説を読むのか」を説明する背景はあれど、その重みを感じるほどではありませんし、反論する側の動機にしても小説は二の次です。

魅力のない人物たち

言葉遣いが年齢と立場にあっていません。そのため、何を言っても響くものはなく、稚拙に感じてしまいます。兄弟の会話も「お兄ちゃん」です。年齢と立場を考えるとそれはないです。

弟が兄をすごいと回想するシーンにしても凄味はありません。どちらも小物です。姉妹作『小説あります』のようなアクのある人物が立ち向かう壁としてあればいいのでしょうが、そういうこともなく作中作と残された本を紐解いて物語は終わります。

よくいえば静かに、悪くいえば起伏無くはぐらかされたような感じです。秀一なのは帯だけでした。


[読書雑文]『おさがしの本は』門井慶喜

『おさがしの本は』門井慶喜を読みました。レファレンスカウンターから始まる図書館に関わる連作短編です。

魅力に欠ける主人公

主人公は無力感に苛まれながらも利用者の依頼に対応しています。その冷たい態度と上目線は作中でも「役人」と言われるような四角四面です。温かみも面白味もない様は、あまり楽しくものではありません。

仕事に対する責任感はあります。熱意を示すこともありますが、基本的に冷淡です。

マニアックな謎解き

まったく分からない内容をまったく分からないマニアックなうんちくと共に語られてもついて行けません。

そのため、「なるほど」と思いはしても爽快感はありません。おいてけぼりです。

伝わってこないのか魅力が足りないのか

淡々とした物語について行けないマニアックな謎解き、そして魅力的でない探偵役の主人公。

この組合せでは楽しめません。


[読書雑文]『マージナル・オペレーション 05』芝村裕吏

『マージナル・オペレーション 05』芝村裕吏を読みました。04巻の続きです。

ギリギリの戦いに

相手に数では負け、スポンサーには見捨てられこのままでは資金が尽きてしまう。まさにギリギリの状況です。それでも淡々と落ち着いて対応をしていく様が面白く、残念なことにマンネリをしています。

面白いけどマンネリ化

どうにもならない劣勢をどう切り崩していくのかというが面白さだと思います。一つ間違えれば崩壊する状況のはずなのに、主人公の性格もあって熱くなるところはありません。

苦労を苦労と感じない描写や、女性陣との無自覚な対応も普段通りです。そのため、ギリギリの状況のはずなのに緊張感がありません。安心感ともいえますが盛り上がりに欠けたように思います。

霞のような主人公

その理由はやはり主人公の人物像とその語りだと思います。もちろん、その性格故に
信頼されているのですが、本人の人間くささもどこか薄れてしまったようです。

悩みについても深い洞察をすることはありません。読みやすさを考えるとテンポが良くて良いのですが、その分、大して悩まなくてもなんでもできてしまう人になっています。主人公を慕う少年少女ならそれでいいのでしょうが、読者としてはちょっと残念でした。

それでも決して面白くないわけではありません。状況もギリギリだとは思うのですが、そのギリギリをそれほど感じることができませんでした。それが気の抜けた炭酸のような読後感になったのだと思います。


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