「 2016年11月 」一覧

[読書雑文]『10分あれば書店に行きなさい』齋藤孝

『10分あれば書店に行きなさい』齋藤孝を読みました。街の書店へ行けば様々な知的興奮が見つかる、知的エネルギーのパワースポットである書店の使い方、楽しみ方を紹介しています。

書店愛あふれる表現

本の題名が全てを表現しています。街の書店へ行きたくなるモチベーションアップ本です。大げさな表現が面白く、新書を勧めているのが特徴的です。

ちょっと怪しげな自己啓発やビジネス書のような大げさな表現が続きます。その表現は様々ですが、全てにおいて街の書店は素晴らしいと主張されているため、街の書店が好きな人ならさもありなんとうなづくところが多いかと思います。

ひとくくりにすると以下のようになります。

街の書店は知的エネルギーの集積されている場所であり、ある種のオアシスであり、潜在能力を引き出すパワースポットであり、癒しの空間である。頭の健康を維持する、メンテナンスをするために必要なことが書店通いである。

比較的書店へ行く身としてはやり過ぎと思うと同時に、ずいぶんと心をくすぐられました。

まずは新書を、続いて類書を探して読む

深く考えないで新書コーナーへ行けば様々なジャンルの新書に出会えます。特定のジャンルをどう歩いていいか分からないなら最初の入り口として新書を手に取ることで幅が広がることもあるでしょう。

そういう意味ではたしかに新書は素晴らしいのです。その素晴らしさをひとくくりにすると以下のようになります。

新書の楽しみは森羅万象の道の世界に踏み込めることであり、その広さは日本の文化エネルギーまたは知性エネルギーが結集しているといっても過言ではない。新書コーナーに立ち寄れば書店内を歩き回って知的興奮を探すのと同じ効果がある。世の中の奥深さを垣間見ることが出来る。

書店と新書を勧める芸のような

新書は数が多すぎます。すぐ読めるからいいようなものの、本のタイトルに惹かれて見ても中身が残念な新書が増えているような気がしてなりません。そのため、熱く語られてもなんだか冷めてしまいます。

とはいえ、ぶらり買いやすぐに欲しい本は書店、まとめ買いはネットと分けている身としては「暑苦しいなぁ」と思いました。一種の芸ですね。


[読書雑文]『乙女の読書道』池澤春菜

『乙女の読書道』池澤春菜を読みました。自他共に求める、重度な活字中毒にして書痴である著者が語るSF・ファンタジーを中心とした本について書かれています。本の雑誌、週刊プレイボーイ、野生時代、文藝春秋SPECIALに掲載していた記事をまとめています。

掲載媒体でカラーが違う著者

本の雑誌掲載分

著者の日常より本の紹介といった感があります。

最もページが多いものは本の雑誌の書評です。内容はSF、ファンタジー中心です。はじめは珍しい本が中心です。徐々に紹介の方法や文体が変わっていきます。

読者に語りかけたり、自分で自分を突っ込んでみたり、面白さをくだけた口調で率直に語ったりと、様々なやりかたで本を紹介しています。著者の話も少しありますが、あくまで主役は本というスタイルです。テンションを高めて「これは面白いよ!」と本について率直に語っています。

週刊プレイボーイ掲載分

本の紹介より著者の日常といった感があります。

ページ数は少なめで、本の雑誌掲載分の合間合間にあります。著者が何者か知らない身としては随分と面食らいました。掲載媒体で違うカラーが求められていたのかもしれません。「本好きの私はこんな人!」というのがあふれていました。

野生時代掲載分

紙の本一週間禁止禁止令を受け、iPadを借りて試した著者の話です。使った人なら分かる、電子書籍リーダの不便さを語っています。

紙の本に慣れた、慣れすぎてしまった人ならそう感じるのも納得です。私は著者ほど書痴ではありませんが、おなじような感想をもちました。

文藝春秋SPECIAL

印象的なのが対談相手の父が書評について語るところと著者が自身のスタイルについて尋ねているところです。

本の雑誌掲載分は回が進むにつれて文体は変わっていきます。何があったのかはうかがい知れませんが、父の書評に対する考え方や娘への回答を読むに、書評の難しさと著者の苦労を垣間見たように思いました。

乙女の読書道

私のようにブログで書評を掲載している身としては、対談を読んだ後に改めて本の雑誌掲載分を読み直すことで、対談で出てくる書評についてという重みを感じたように思います。本のタイトルである「乙女の読書道」をここに見たような気がします。

父から娘への回答は以下の通りです。

「そういう意味で書評は一種の人気商売」(p226-227)
「本屋の棚の前でワクワクしながら本を探している感じは、文章にゆたっていると思うよ。プロの書評家やSF評論家ではない、この半身のスタンスがいいんじゃない?」(p234)
「もう一歩進めて次に何か試みるとしたら、文章の量を倍にしてみること。原稿用紙五枚でどんなものが書けるか。五枚って長いよ。五枚の書評に耐えうる本ってそう多くない。それを承知でやってみる。五枚じゃなくて四枚でもかなり違うと思う。」(p234)

読書道はまだまだ嶮しそうです。


[読書雑文]『「依存症」社会』和田秀樹

『「依存症」社会』和田秀樹を読みました。様々な例で今の日本が「依存症」社会であることを説明しています。

なんでもかんでも依存症

たしかに「依存症」を誘発し、そこから利益を上げる構造があり、制限らしい制限のないパチンコの話は分かります。ですが、多くの話は政治が悪い、マスコミが悪い、法律が悪いと、なんでもかんでも悪者です。産業も同様です。邦画が流行っているのはテレビ依存、長電話は電話依存、独身が多いのは依存した物にお金を使っているからなど、なんでもかんでも原因は依存症です。

よく聞く話が多いです。著者の考えがどこにあるのかいまいち分かりません。依存症は病気なので気にすることなくオープンに、カウンセリングなどの治療を活用すべきということでしょうか。著者風に言うと、それもまた依存症に依存するビジネスになると思います。

著者なりの健全な社会というのがあるのでしょうが、それが強すぎて逆に支離滅裂に聞こえてきました。社会の問題に対して規制やベーシックインカムの声を上げるのは、その手前の治療に関する話がほとんど無い以上、説得力に欠けます。

精神科医が「依存症」という言葉にかこつけて社会を非難している本と捉えられても仕方がないと思います。まえがきに「“奇書”の類にいれられかねない本」と言っているのはその予防線でしょうか。


[読書雑文]『ギャンブル依存国家・日本』帚木蓬生

『ギャンブル依存国家・日本』帚木蓬生を読みました。副題は『パチンコからはじまる精神疾患』です。

著者は作家であり精神科医です。精神科医として実際に患者を診察してきた目線から、日本がいかにギャンブル依存であり、ギャンブル依存の多くにパチンコとスロットが関係していることを書いています。

ギャンブルへの辛辣なコメント

作家としての著者の本はヒューマニズムある温かい作品が多いです。しかし、本書ではよほど思うところがあってなのか、辛辣なコメントが目立ちます。

医者である著者からすれば、「これだけの害を体験しているのになぜ構造的にギャンブルを支援する体制になっているのだ」ということなのでしょう。語られる言葉は行間に怒りと呆れがにじみ出ています。

このように、ギャンブル全体に嫌悪感をあらわにする内容です。その中で、特にパチンコは副題に書かれているほど力を入れています。

第一章の事例や第二章の月ごとのパチンコを原因とした借金、ギャンブル依存となった人の見境ない行動や結果は、読んでいてうんざりします。

ギャンブル依存国家・日本

「全国津々浦々に12000軒あって、コンビニのローソンの数と方を並べるほどパチンコ店はあります。パチンコ屋や公営ギャンブルの年商合計は約25兆円です。日本にはマカオが五つ以上あるようなものだ。」というのが日本の状況です。そしてカネの集まるところは強く、問題点は意図的に紹介されないようになっているのも今の日本の状況です。

日本はギャンブル害の7割、8割を占めるパチンコとスロットをギャンブルと見なしていません。犯罪の原因がパチンコとスロットによる借金であってもそのことは公表されません。ギャンブル障害は予防が肝心なのにギャンブルを誘う広告ばかりです。

今、日本は本書の題名にふさわしい状況なのでしょう。


[読書雑文]『人間はどこまで耐えられるのか』フランセス・アッシュクロフト(訳)矢羽野薫

『人間はどこまで耐えられるのか』フランセス・アッシュクロフト(訳)矢羽野薫を読みました。原題は『LIFE AT THE EXTREMES』です。

どのくらい高く登れ、深く潜れ、暑さ寒さに耐え、速く走れ、宇宙で生きて、生命は耐えられるかの計七つについて書かれています。

様々な挑戦

七つの切り口で書かれていることに共通しているのは科学者たちの知的好奇心と危険な挑戦です。

限界に挑戦する以上、致し方ないことなのでしょうが、安全性を若干軽視しがちな実験の連続です。

比較的分かりやすい内容

ライフサイエンスの研究者が一般読者向けに書いた本を対象とする章をめざして書かれただけあって、比較的分かりやすい内容です。また、それは身近でありながら知らない身体の限界に関することなので、知的好奇心がくすぐられます。

とはいえ、真面目に語られておりウィットはありません。そのため、数字が並ぶところなど一部退屈するところもあります。その部分を除けば人体の不思議と限界に挑戦する科学者たちが読書を大いに楽しませてくれます。

知らないことを知る楽しみがある

この本の内容が即、生活に役立つわけではありません。しかし、紹介されている実験を通じて得た知見によって様々な対策がされている環境で生活しているのも事実です。

そんな科学者たちの奮闘はきっと楽しめるはずですし、知らないことを知る楽しさが本書にはあります。


スポンサーリンク
アドセンス