「 2016年08月 」一覧

[読書雑文]『喰らう読書』荒俣宏

『喰らう読書』荒俣宏を読みました。副題は『一番おもしろい本の読み方』です。

沢山の本を読み、著作のある本好きの作家が語る読書です。喰らうように本を読む内容は、本好きなあまり、語るべき主題を補強するために紹介する本の話が中心となり、主題がおいてけぼりになる傾向があります。

そのため、結局何がキモなのかがよく分からず、一つの章が終わるたびに章の題名を見返して読み返すのですが、それでもよく分かりません。

本は買う。手元に置いて読む。読んだ本からつながる本を読む。どんな本でも楽しみ方は色々ある。集める。などが読書術らしい内容です。

オタクはかく語りき

オタクは語り始めると本筋から話がそれて自分の好きなことを語り始めます。本人は本筋と関連のあることを語っているつもりなのですが、受け手はそう感じません。そのため受け手は困惑し、呆れ、取り残された感がします。本書もそれと同じです。

伝わってくるのはただただ本が好きなんだということです。荒俣宏ファンであり、著者の読書傾向が分かっていれば、また違った見方になるかもしれません。


[読書雑文]『ペナンブラ氏の24時間書店』ロビン・スローン(訳)島村浩子

『ペナンブラ氏の24時間書店』ロビン・スローン(訳)島村浩子を読みました。原題は『Mr. Penumbra’s 24-Hour Bookstore』です。

あらすじ

失業中の青年が次に見つけた仕事はペネンブラ氏の24時間書店でした。この書店は繁盛していませんが24時間営業で、梯子付きの高い本棚には世間では取り扱いされていない本が並んでいます。書店と本に隠された秘密をめぐり、物語は進んでいきます。

アナログとデジタル

表紙のような本好きをくすぐるアナログな物語かと思いきや、集客のためにハイパーターゲッティング広告を使ったり、書店の3Dモデル化の話など、序盤からデジタル側の話になります。

さらにグーグル社員、友人でもあるミドルウェアのCEO、ハッカーの登場によりその方向性は加速します。

アナログ側の話では、詳細に書かれた書店の業務日誌や何かを調べている常連たち、コデックス・ヴィータイの存在など秘密の仕掛けはたくさんあります。

アナログとデジタルの混じった展開は、本好きやデジタル的な意味をおおよそ分かるならば楽しめる内容ばかりです。

グーグルの魔法

デジタル側の話で大きく扱われているのがグーグルの存在です。その巨大なリソースは現代の魔法です。

物語が停滞しそうな時にグーグルの魔法で絞り込みが行われます。そうして問題は解決し、話は次に進んでいきます。

デジタルとアナログの融合

デジタルとアナログを今風に融合しているところが本書の面白さです。

デジタルの最先端がグーグルなら、アナログは活版印刷や活字、博物館アーカイブ、そして人と人のつながりです。

本とコンピュータとゲームの素養があれば、本書はさらに面白くなるでしょう。


[読書雑文]『読書論』小泉信三

『読書論』小泉信三を読みました。

第1刷発行は1950年です。旧版の用字や仮名づかいをすべて改めたとあります。それでも普段、使わない表現や漢字を見かけるため、読むのに難儀します。例えば「流行浮沈を超越する」「読書の感興」「哲学書の飜訳は窮屈艱渋」などは普段使う表現ではありません。

読書論は福沢諭吉、森鴎外、夏目漱石、ゲーテ、ショーペン・ハウワーに触れながら語られます。敷居が高いです。

わかりやすさを求めるなら比較的新しい様々な読書論・読書術の類書を読むべきです。内容にそう変化はありません。

本書は戦後の頃から今と変わらない読書論に触れる、確認するという意味ではよい本です。


[読書雑文]『駄作』ジェシー・ケラーマン(訳)林香織

『駄作』ジェシー・ケラーマン(訳)林香織を読みました。原題は『potboiler』です。

あらすじ

ベストセラー作家だった親友の遺作を剽窃したことで、主人公はベストセラー作家の仲間入りをします。しかし、剽窃をしたことで思わぬことに巻き込まれていきます。

皮肉混じりの状況が続く

面白いのが物語の中盤からです。文芸肌の主人公は前半でありきたりな表現をくさしています。しかし、そのありきたりな表現がほとんどそのまま出てくるのが物語の中盤です。

物語はスリラー小説らしく展開します。主人公は作家である知識と経験を活かして対処しようとしますが、現実はそんなに甘くありません。スリラー小説の主人公のようにはなれず、振り回されるだけです。

どちらも皮肉な内容です。冷めた笑いを誘います。

『駄作』なのか『駄作』でないか

真面目にやっているばかばかしさと冷めた目線、それらを包み込む諧謔を楽しめるのが本書です。題名通りの駄作とも言えますし、気づけば分かる遊びを楽しむ本とも言えます。

仮に駄作と感じてもどうにもなりません。なにせ題名が『駄作』だからです。

それもまた本書の面白さです。


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