[読書雑文]『菓子フェスの庭』上田早夕里

『菓子フェスの庭』上田早夕里を読みました。ラ・パティスリー』から五年後の物語です。

中堅パティシエとなった夏織は「お菓子のフェスティバル」で新作を担当することなり、主催者の要望に応えるべく日々奮闘することになりました。そんな中、憧れている先輩パティシエが帰ってくるというのがあらすじです。

カバーデザインが物語を象徴

先輩と後輩、男性と女性、作る側と売る側、それぞれの想いを交差しながら、彼女はどのように育ってどのような結論を出すのかが描かれています。

中村祐介のカバーデザインが物語を象徴するかのように描かれています。お菓子を作りながら先輩パティシエとその向こうを見つめる夏織はあれから良い方向に成長したように見えます。先輩はその姿を正面からじっと見つめています。背面にはなんともいえない表情をした男性が夏織を見つめています。

まっすぐに成長した夏織

『ラ・パティスリー』では一年経ったけどまだ下っ端状態の彼女でしたが、本作では中堅パティシエとして活躍しています。それでいておごることはなく、まだまだまっすぐに成長しようとしている姿は大変ほほえましく、読んでいて清々しいです。

夏織の働くお店の環境も大変素晴らしいです。先輩の言葉もですが、そのことを自覚している夏織の想いも描かれています。一つだけわがままを伝えるところもありますが、その純朴な姿は読んでいてまぶしく感じました。

プロデューサーの男

カバーで出てくる右下の男は完全に引き立て役になっています。

夏織は近づいてきた男の気づくと、ぱっと表情を明るくした。武藤がいる場所からでもわかるほど、うれしそうな雰囲気が全身から溢れ出ていた。(p117より)

惚れた女性のこんなところを目撃する羽目になります。これはつらいです。この状況でもまだ諦めず自分の強みを夏織にぶつけるだから、それはそれですごいとは思います。

自分の強みは仕事の強みです。仕事と恋愛との合わせ技は自分の想いのまぜこぜであり、ある意味で華です。しかし、その中身は完全に一人相撲になっています。もちろん答えはお察しのとおりなのがこれまたつらいところです。

選択と決断

彼女の選択と決断は以下の通りです。

両方は選べませんから。おそらく向かっている道が違うので……。どちらが私にとってよい選択なのか。それはいまの時点ではわかりません。けれども、選んだほうが私に相応しい道になるでしょう。道とは、そうあるべきです。でなければ、いま選ぶ意味はありません。(p187)

どこまでもまっすぐ、前向きにがんばろうとしている人は見ていて気持ちがよく、そしてまぶしく感じます。

スポンサーリンク
アドセンス

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする


スポンサーリンク
アドセンス