[読書雑文]『ラ・パティスリー』上田早夕里

『ラ・パティスリー』上田早夕里を読みました。神戸にあるフランス菓子店を舞台にした人間模様を描いています。

中村祐介のカバーデザインは神戸を舞台にしたお菓子を作る男女二人の恋愛小説を連想させます。しかしその中身はパティシエの矜持と敬意にあふれる内容でした。

お菓子作りの大変さ

お菓子を作る過程や店の下準備が細かく描かれています。それでいて嫌みな感じはなく大変さがさらりと伝わってくるのが印象的でした。そのため大変読みやすく、その苦労が分かるだけにお菓子の描写がよりおいしく読めてしまいました。

先輩と後輩

物語は新米パティシエである女性と、記憶を失ったがそれでも職人としてはひとつの完成された存在である凄腕パティシエである男性の出会いから別れまでを描いています。

女性が前向きなこともあるのですが、男性の厳しさと優しさのあわさった解説は美しき先輩後輩の関係を見ているようでした。この男性もですが、プロだから語れる厳しさを登場人物の多くが持っており、プロというのはこういうものなのだということが伝わってきます。

とはいえ、「あきれるほどの回数の失敗と、トン単位の砂糖と粉の無駄遣いをすれば」「人が三年かかって覚えることを一年で」など、けっこう無茶なこともさらっと言っています。

高い理想にむけて行動し、その力もある先輩の言葉は後輩にとって大きな励ましになります。そういう言葉が随所にあります。

プロ意識、職人の矜持

プロだからこそ、職人としての矜持があるからこそ衝突もあります。オーナーと雇われ、店の方針と自分の方針、経営の難しさなど問題は様々です。そこで語られる登場人物たちの考え方や決断はちょっとした箴言だと思います。

それらを新米パティシエを通じて知ることができます。パティシエでなくても仕事をしている身としては敬意を払いたくなります。

尊敬なのか憧れか

二人の関係が尊敬なのか憧れなのか、それとも恋なのかは分かりません。恋愛よりも職人としての生き方をまずは優先したちょっとほろ苦い終わり方ですが、それはそれでおいしいと思います。そういうお菓子もありますから。

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