[読書雑文]『振り込め犯罪結社』鈴木大介

『振り込め犯罪結社』鈴木大介を読みました。副題は『200億円詐欺市場に生きる人々』です。振り込め詐欺(オレオレ詐欺)の黎明期から最近の話までを、現場から見た振り込め詐欺の現場を書き綴っています。

振り込め詐欺黎明期の勢いでやっているような時代から、オレオレ詐欺店長格座談会詐欺のプレーヤーからオーナーになった男の話現場からみた話など、どれも興味深いものばかりです。

進化する振り込め犯罪

黎明期のイケイケと異なり、「リスクを減らすために」「大きく稼ぐために」取り組んでいることが特に印象的でした。著者は繰り返し語っていますが、規律の厳しさとその目的、飴と鞭の使い方などは強烈な上昇志向をもった会社のような組織力です。

動かす金額の大きさは仕事の面白さに直結しますし、詐欺であることの罪悪感の解消はモチベーションアップになります。まともに就職できず、就職しても安月給であえぐイケイケがこれを仕事と考えて真剣に取り組むのも分かるような気がします。

名簿と携帯電話

彼らの使う道具、特に名簿の進化も凄まじいです。電話帳から始まったはずが、様々なところから入手した名簿を条件によって仕分け、その仮定で下見までして完成の高い名簿に仕上げていく話や、講師の存在、テレアポのテクニックを改良した話などは、まさに「振り込め詐欺で営利を追求する結社」という表現がぴったりです。

名簿は主に資産家の高齢者を狙った例で話されています。アンケートや調査などは警戒すべき点そのままですが、こう言われないと分からない内容だと思います。言ってしまえばそれだけ完成度を高くするために取り組んでいるわけです。これも真面目?に営利を追求しているからでしょう。

口座や携帯電話などの道具は社会的弱者、困窮層が利用されていることと、そのための緩いネットワークを指摘しています。裏家業へ導く緩いネットワークが振り込め犯罪を支えており、そして利用して捨てられ、中にはそれで満足している人もいる現状についても説明されています。

プレーヤーからオーナーになった男の話

前著の『家のない少年たち』では少年たちとかなり距離が近くなり、怒りの感情を吐露していた著者ですが、今回は距離をおいて書かれています。そのため多少温度は下がってはいますが、それでも描かれる現場感はかなりのものです。

その内容はオレオレをやるきっかけの話やオレオレの満足感と寂寥感、上からみたオレオレ組織の大きさなどです。『ギャングース』を読んでいれば分かりますが、本書のかなりの部分が『ギャングース』の案となって組み込まれていることが分かります。

振り込め詐欺は変化している

現在の振り込め詐欺の現場は、著者の追い続けている「阻害された者たち」ではなく「カタギプレイヤー」が流入しているからか、戸惑いを感じさせたまま本書は終わります。

振り込め詐欺の組織化の過程で会社のようになった組織となったことでハードルが低くなってしまったのかもしれませんし、モラルが崩壊しつつあるのかもしれません。

そしてなによりも日本は貧しい国になってしまったのかもしれません。そんな日本の真の闇を気づかっているあとがきが印象的でした。

スポンサーリンク
アドセンス

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする


スポンサーリンク
アドセンス